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 2023年8月20日、長野県大町市と北アルプス黒部川源流を繋ぐ登山道「伊藤新道」が40年ぶりに復活した。このニュースは、日本の登山界において大きな話題となり、様々なメディアで取り上げられた。しかし、北アルプスの登山道は自然災害や管理体制の不安定さから荒廃が進んでおり、登山道ができることが決してプラスの側面だけではないことが想像できる。道は常に自然の力と人々の文化 の歴史を内包して、更新されている。

 「TRACE」シリーズは、実際に山に登って、川の水や雪溶け水で墨を磨り、歩いたエリアの地図を和紙にトレースしたものである。墨は、水が大地に染み込むように和紙の表から裏まで染み込み、自然現象と作者の手作業の結果が形となる。また、裏を作品とすることで、表面や境界の層を絵画として視覚化する。「TRACE」は絵画では下図をなぞること、登山用語では雪山を歩いた踏み跡のことを意味する。自然現象と人々の生活や文化の歴史の蓄積の記号として、本作品群を提示する。地図は歩いた分だけ広げることができ、最終的に地球全体の反転した地図を作るという思考実験のもと制作する。

TRACE​

五七判

​白麻紙、墨、唐松岳の雪溶け水

TRACE​

S30

​白麻紙、墨、燕岳の雪溶け水

TRACE​

サイズ可変​

​和紙、墨、水

桃源郷への地図​

S10

白麻紙、墨、雲ノ平の湧水

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